心に鍬を入れられて

心に鍬を入れられて 2025年3月号

執筆者
大岡左代子

日本聖公会
女性デスクの働き(3)

大岡左代子(おおおか・さよこ)
日本聖公会京都教区司祭
日本聖公会女性の課題に関する担当者

 

 

こちらへの寄稿も最後となりました。今回は「按手された女性の司祭職の有効性の保持」そして、「ハラスメント防止」についてお伝えしたいと思います。

2025年1月現在、日本聖公会では16名の女性の司祭が働いています。日本聖公会の法規から、司祭志願の要件である「男」が削除されたのは1998年のことでした。世界の聖公会では1970年代に香港、カナダ、米国などで女性の司祭が按手されていましたが、日本では1970年代後半からようやく議論が始まりました。そして約20年を経て、法規が改正され、1998年12月12日に日本聖公会で最初の女性の司祭が誕生しました。

しかし、法規改正と同時に決議された「女性の司祭按手実現に伴うガイドライン」は、立場の違いを認め合うことを強調したため、結果として反対意見を持つ人を守るガイドラインとなってしまいました。法規改正から30年近くを経た現在でも、女性の司祭按手に反対する立場の人は存在します。その多くは「イエスが男であったから、司祭の仕事は男が担うもの」という考えによるものです。しかし、その後の議論によって、2018年の総会で前述のガイドラインを廃止、新たに「日本聖公会における女性の司祭按手に関するガイドライン」が決議されました。このガイドラインでは、「日本聖公会祈祷書によって聖職按手を受領した者の聖職位は有効性を保持していることを認識すること」と「立場の違いを超えて聖餐によって一致すること」が最も重要なこととされています。また2022年4月、北海道教区で東アジア初の女性の主教が按手されたことは大きな喜びでした。しかし、それですべてが解決されている訳ではありません。聖公会は「多様性の一致」という言い方をよく用いますが、時にその言葉が無自覚な性差別を容認することにもつながることを認識したいのです。性差に関わりなく奉仕職へと招かれる人が増し加わり、十全にその働きをなすことができる共同体となることを願い祈りたいと思います。

また、女性デスクが設置された2006年から現在に至るまで、女性デスクは日本聖公会における「ハラスメント防止」の取り組みにも関わってきました。2005年に公になった京都教区での聖職者による性暴力事件がきっかけで、日本聖公会の各教区でセクシュアル・ハラスメント防止の仕組みを作るためのモデル案策定を担うことになったのでした。大変な作業でしたが、このことは今、各教区でのハラスメント防止の活動へと広がり、世界の聖公会で取り組んでいる「セーフチャーチ・ガイドライン」の日本聖公会版策定の活動に繋がっています。このガイドラインの成り立ちには欧米の教会での性虐待事件が背景にありますが、教会という組織は、虐待を起こしやすい構造をもっていることを自覚しなければならないと思います。「教会は誰にとっても安全な場所であるだろうか」とこれからも問い続け、すべての人が尊重され、大切にされる共同体となっていくために歩んでいきたいと思います。

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