心に鍬を入れられて

心に鍬を入れられて 2025年8月号

執筆者
北島 峯子
所属
八王子めじろ台教会(東京)

生かされてー平和を受け取るひとりとしてー

北島 峯子(きたじまみねこ)
八王子めじろ台教会(東京)

 

 

こどもとともに十戒(じっかい)から平和のメッセージを聴く

みみをすますと
きこえてくる「わたしは主 あなたの神」
へいわにであう やくそくのことばが
うけとろう へいわ
「わたしは主 あなたの神」
へいわにであう やくそくのことばを

(絵本4~5頁)

神はこれらすべての言葉を告げられた。『わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出した神である」(出20・1~2)。この言葉は、十戒の序文とも言われ、神と人との関係を愛の契約として語る重要な言葉です。わたしたちを創造した神は、わたしたち一人ひとりと真正面から向かい合い、「あなたにはどんな時もわたしがいるのだ」と語りかけます。

わたしはここに神の愛、平和の約束が語られていることを知り、絵本をつくりました。この序文に導かれつつ、一つ一つの戒めに耳を傾ける時、神はあらゆるものの奴隷となってしまうわたしたちを立ち止まらせ、神の愛である平和のメッセージを聴く者へと方向転換させてくださるのです。わたしたちの間に平和を造り出すのは、最強の軍事力や有能な権力者によるのではなく神の愛です。

わたしはこの絵本をこどもと対話しながら読みたいと制作にあたりました。わたしたちはこどもを、こども自身として大切に受け止めているでしょうか。こどもはおとなになる必要のある不完全な存在、おとなから受けるだけの受け身な存在に過ぎないと思ってはいないでしょうか。イエスはこどもを真ん中に立たせ、「神の国はこのような者たちのものである」(マルコ10・13~15)と、こどもを、神の国を主体的に受け取ることのできる存在として明らかにしました。こどもに十戒をどのように理解させようかとするのではなく、こどもと共に十戒に込められた神の平和を受け取るおとなであり続けたいと思っています。

わたしの心に残る一文を紹介します。

幼い日に心からサンタクロースの存在を信じることは、その人の中に、信じるという能力を養う。(中略)サンタクロースその人は、いつかその子の心の外へ出ていってしまうだろう。だが、サンタクロースが占めていた心の空間はその子の中に残る。この空間がある限り、人は成長に従ってサンタクロースに代わる新しい住人をここに迎えることができる。

(『サンタクロースの部屋―子どもと本をめぐって―』松岡享子(まつおかきょうこ、こぐま社、4頁、1978)

サンタクロースに代わる新しい住人を迎える空間が、すべてのこどもたちに備えられているといいます。「神は御自分にかたどって人を創造された」(創1・27)の言葉を重ねながら、こどもと共に歩むことに、大きな希望を与えられています。

 

『うけとろう へいわ―こどもとおとなにおくる十のことば』

『うけとろう へいわ―こどもとおとなにおくる十のことば』(ぶん きたじまみねこ/え とばあかし)
本書は2023年に制作され自費出版されたものを、2025年にいのちのことば社より発行。
A4変判、44頁、定価1,320円(本体1,200円+税10%)2025年7月発行。
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