次に、枠をはずして可能性を拡げる
神戸伊川教会牧師(兵庫)
鮫島泰子(『世の光』編集委員)
最初期の女性会活動が、米国南部バプテスト連盟の当時の伝道方策をそのまま引き継いだものであったことは九月号で確認しました。宣教師である夫と共に来日した妻たちの祈りと献身と熱意は純粋で、だからこそ今の私たちが在ると断言してよいと思います。
ただここで意識しておかなければならないことは、当時の欧米諸国のキリスト教伝道が植民地政策の一環として政治と密着していた、ということです。日本バプテスト婦人会同盟時代、宣教師の妻たちからキリスト教信仰に関する一切を学び、それらを自らの信仰として受け入れた女性たちの内には当時の政治がらみの伝道方策がそのまま「伝道=宣教師派遣」として定着していたのではなかったかと私は想像するのです。しかし現代の私たちは、宣教師派遣は世界宣教の一手段である、との認識を持っています。ですから、今後に目を向ける時、まず「世界伝道=宣教師派遣」という既成概念をリセットする必要を覚えます。
その上で未来を展望しようとする時、女性連合の「私たちの使命」が、多くのキーワードを提供してくれていることに気づきます。「日本を含めて全世界の人びとにキリストの福音を伝える。世界のさまざまな痛みの中で苦しみ悲しむ人びとに寄り添う。全世界の人びとと共に福音にあずかる。この使命を果たすために助け合い、励まし合う。」(※1)
今、世界はコロナ危機によってあらゆる面で激しく痛めつけられています。世界が不安と悲しみと疲れに覆われています。この未曾有の危機はしかし同時にSNS(※2)を一気に進化させ、拡大させました。私たちはイエスさまのアウトリーチ、相手と向き合い言葉を交わし、手を伸ばされた姿をしっかりと心に留めつつ、この時この状況の中で可能な使命の遂行を、世界宣教を、現代の利器を活用して行うことができるはずです。
また、今この時も世界の各地で戦争や紛争、内戦が続いています。ベトナム戦争のころの反戦歌の元歌はウクライナの古い民謡であったと言われます。人類は、有史以来の「力」による支配の間違いに、一体どれほどの命を犠牲にすれば気づくのか、蛮行を止める決断ができるのか。素朴な歌詞が今なお戦火の絶えない世界を 糾弾します。平和のために続けられている各地での祈祷会。歌う会。これも欠かせない世界宣教です。
また、女性連合の抱える「ジェンダーによる参加の限界」という課題に正面から向き合うことも「私たちの使命」に直結しています。このことは、痛みの中で苦しみ悲しむ人びとと共に歩み続けることにもつながります。私たちの身の周りで、私たちが女性連合の使命に仕えることが求められ期待されている、世界宣教の使命遂行へと 促されているのです。
「神のさまざまな恵みの善い管理者として、その賜物を生かして互いに仕えなさい」
(Ⅰペトロ4・10 )
胸の内に広がる世界宣教のフィールド。与えられている ものすべてを用いて召しに応えていこうではありませんか。
※1 「女性連合ハンドブック」2015年度改訂版「私たちの使命」より抜粋要約。
※2 ソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service) の略で、登録された利用者同士が交流できる Web サイトの会員制サービスのこと。