今月のことば

今月のことば 2024年2月号

誰のための正義か

女性連合書記 戸井田 敦子
(といだ・あつこ/西川口教会[埼玉])

 

「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」(ヨハネによる福音書8・7b)

ある日突然、戦争が起きた。ある人は自分たちが正しいと言い、もう一方も自分たちが正しいと言う。周りはどちらかを正しいと決めて加担する。それぞれの環境で培(つちか)われた価値観で、100人いたら100の(人間の)正義があるのだ。こんなことをして、人びとを苦しめるなんて酷すぎると私たちは思う。怒り、涙し、祈り続ける。そうしていながら、ある日誰かと諍(いさか)いをする。意見が違う、こんなことはおかしい、なぜそんなことになったのか、と批判し、間違っていると思う者を責める。私たちは主に従いたい、主の目に「正しい」とされる者でありたい。そうだ、誰だって自分は「正しく」ありたい。信仰を貫き、正義がなされるのを見たいのだ。

しかし、自分自身の「これが正しい」と信じた信仰が貫かれた先には、誰がいるのか。私たちが何かを主張するとき、誰のための正義なのか、何のための正義なのかをもう一度考えてみる必要はないだろうか。それによって苦しむ人はいないのか、相対する立場の意見を十分に聞いた上でのことなのか。信仰と言いながら、「自分の」信仰を守るためになっていないか。

主は女を罪に定めなかった。罪のない者はいない。私たちはすべて、罪あるが赦されたものなのだ。私たちは主に倣ってお互いを赦し、愛し合うことができるのだろうか。それを、主は問うておられる気がしてならない。

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