中野教会(東京)協力牧師
日本バプテスト連盟宣教室長、国外伝道臨時委員会委員長
坂元 幸子(さかもと・さちこ)
女性連合『50周年記念誌』で「今、バプテストとして、女性として」と題して、日本バプテスト連盟の70数年の歩みから連盟総体の中のいち組織としての女性連合、また連盟における女性の牧師について、ジェンダーの課題として書かせていただきました(記念誌31〜37頁)。
女性連合は南部バプテスト連盟(SBC)の宣教師派遣のシステムやそれを支える米国南部諸教会の文化をルーツとして、WMU(南部バプテスト女性宣教同盟)をモデルに組織されました。つまり、女性連合は、その発足当時はもちろん、これまでもSBCの精神性や信仰姿勢、教会観などを深く身にまとって歩んできたと言えます。それ自体はたしかに信仰のルーツとしての神さまの恵みです。
しかしその一方で、「それがあたりまえ」「これこそが唯一」となる時、私たちは知らず知らずの内に伝統や慣習の持つ価値観を絶対化し、そこから自由になることができません。女性連合の50年の歩みと現在の機構改革はそのような私たちのあり方をもう一度神の前に問い直し、自らの言葉で新たに自分たちを再創造する恵みの機会であると思います。これは今年で結成77年を迎えた日本バプテスト連盟の歩みにも同じことが言えますし、「国外伝道」の歴史も同様です。「記念誌」の拙文から引用いたします。
◆これからの国外伝道(『記念誌』34頁)
現在、連盟の第4回機構改革の中で「国外伝道」「世界宣教」のこれからのあり方が再検討されています。その答申原案(2023年度第1回理事会提出資料)には検討課題の重要な一つとして「これまでの国外伝道において不平等な構造を続けてきたことに関する女性連合への謝罪」が挙げられています。「謝罪」という言葉に戸惑いを覚えられる方がたもいるでしょう。「世界伝道は女性たちの使命であり、自主独立の活動であるから、『謝罪』を受けるのはそぐわない」「女性たちは謝罪されるような必要性は感じていない」、そのような感覚もお持ちかもしれません。たしかに50年前の結成以来、女性連合は大きな「連盟総体」としてのバプテストの交わりに連なってきました。女性連合は女性たちのミッションである「世界伝道」においては自主独立の組織として全国に実行委員を立て、諸教会から派遣される代議員による総会が開かれ運営されてきました。が、世界祈祷週間でささげられた献金は「連盟」の「国外伝道(及び国内伝道)」に無条件で用いられ、宣教師の選任や任命などの意志決定プロセスに女性連合は参加することはできませんでした。そこにはやはりジェンダーによる役割分担と差別的な構造がありました。にもかかわらずそれが「あたりまえ」とされ、誰も問わずどこからも問われることなく存続してきたのではないでしょうか。その意味で、この「謝罪」とは「連盟総体」の中における、「組織としての連盟」と「女性連合」の関係における「構造的な問題」に対する「気づき」であり「認識の共有」です。そして、2007年の連盟の「性差別悔い改め声明」が告白するように、「連盟内の男性中心的構造によるジェンダー差別」に、「連盟総体」を形成する「連盟」も「女性連合」も共に気づき合い、和解の主のもとにこれからの新しいパートナーシップを構築してゆこうという重要な関係修復・再出発の事柄なのです。決して個々人のこれまでの献身的信仰や使命感を評価したり否定したりする意味での「謝罪」ではないのです。
記念誌発行からちょうど1年。この間、連盟理事会はこの課題を未来に向けた大切な課題として受け止め、応答文書作成に取り組んできました。その成果が女性連合と共有されるのもまもなくです。
2026年度から「国外伝道」は「国際宣教」に変わろうとしています。それは単なる名称の変更、組織の改編にとどまりません。神さまがこの世界で成しておられる働きを、私たち日本のバプテストが新たな信仰と視座に立って行う宣教理解の捉え直しです。その意味で「謝罪」とは一方が他方に行う「お詫び」ではありません。「相互の気づき」と「認識の共有」に基づいて主の和解の十字架の前で双方が共に方向転換し、新たな未来に向けて共に歩みだす協働の行為です。「国際宣教」はそこから形作られるのです。