12 食堂の祈り
「よい物語食堂」店長/ふじみ教会(神奈川)
市川 詩音(いちかわ・しおん)
「主よ わたしの小さな台所を祝福してください」から始まる“台所の祈り”というカードをいただいた。素敵な祈りの言葉とデザインだった。マネして“食堂の祈り”を考えてみた。
主よ。こんなに小さな食堂をここにおいてくださってありがとうございます。ご飯をよそうときも、お味噌汁を温めるときも、心を喜びで満たしてください。あなたの祝福をこの町の皆でいただくことができますように。晴れの日も、雨の日も、まれな雪の日も、あなたは必要な糧を与えてくださり、わたしたちはこの場所で、それを分かち合うことができます。わずか八席の店ですが、これまでなんと多くの方がたがここを訪れてくださったことでしょう。お店を開けていなければ、一度も話すこともなかったであろう人たちです。
何年やっても慣れず、料理の腕も上達せず、冷や汗ばかりの毎日ですが、これまでをあなたは守ってくださいました。お米を炊くのに失敗したことは数え切れず、水道管が破裂したり、軒天(のきてん)が落ちてきたり、排水口が溢れるなんて序の口で、コロナ自粛、米騒動、物価高、雨漏り、冷蔵庫故障、勧誘、セールス、ヒザ痛…。試練は数え切れませんが、その度ごとに耐えられない試練は、…ギリギリないということを知らされました。そして、あなたは多くの助けを与えてくださり、いまでは教会の方がたや近隣の学生たちが、なくてはならない助け手となってくれています。どうかこの食堂を訪れる人びとを祝福してください。魂に飢え渇きを覚えている人がいれば、この一杯の味噌汁を通して、ひと時でも人心地(ひとごご)ちをつくことができますように。将来に不安を持つ人がいれば、この一膳のご飯を通して、今日もいのちをお与えになるあなたのみ業を知ることができますように。孤独を覚えている人がいれば、わたしたちの不器用なもてなしのなかに、その存在を喜ばれているお方のまなざしを感じることができますように。戦禍のなかで怯え苦しむ人がいれば、たとえ離れていても、そのただ中におられる主と共に平和を求めることができますように。どうかこの町を、この世界を、あなたが祝福してくださいますように。それぞれの地に置かれた教会で、あなたのみ業がなされますように。深い痛みと悲しみに満ちた世界のなかで、あなたのみ想いが、それぞれの教会を通して、この地に証しされていきますように。忙しさのなかにあっても、あなたの呼びかけに気づくために、わたしたちの生活を単純で素朴なものにしてください。どんなに小さなことにも心をとめて行うことができますように。何も残らないように思えたとしても、その実を預けることができますように。疲れ切ってしまったときには、「勇気を出しなさい」と言われた方を思い出すことができますように。今日もわたしたちは食堂の一隅で、あなたが来てくださるのを待っています。
どうか、あなたをお迎えするのにふさわしく、わたしたちの心を整えてください。
「食堂と教会のあいだで考えた信徒の牧会学?」はこれで最後となります。一年間お読みくださり、ありがとうございました。またいつの日かお目にかかりましょう。