聖書植物の復元(3)
長住教会(福岡)
小林 洋一(こばやし・よういち)
「しゅろの主日」→「なつめやしの主日」
前回、ナツメヤシについて紹介しましたが、ナツメヤシのヘブライ語は「タマル」です。聖書では女性名として同綴(同音)で出てきます(創38:6、サム下13:1)。この名が、ナツメヤシの立ち姿(雅歌7:8)だけでなく、その実の甘さ(sweetness)を連想させるからかもしれません。
さて、イエスの最後のエルサレム入場に際してもナツメヤシが出てきます。
「12その翌日、祭りに来ていた大勢の群衆は、イエスがエルサレムに来られると聞き、13なつめやしの枝を持って迎えに出た。そして、叫び続けた。『ホサナ。主の名によって来られる方に、祝福があるように/ イスラエルの王に。』」 (ヨハ12:12-13)
口語訳は、この「なつめやしの枝」を「しゅろの枝」と訳していました。シュロはナツメヤシと少し似ていますが、中国原産(トウジュロ)で、日本産を「ワジュロ」と言い、ナツメヤシとは別物です。キリスト教の伝統では、イエス・キリストのエルサレム入城の出来事から、受難週の最初の日曜日を「しゅろの主日」と言ったりしますが、本当は「なつめやしの主日」とすべきところでした。しかし、植物学的には正しくないとしても、伝統は伝統で、この不都合な真実に対しては、「この『しゅろ』とは『なつめやし』のことです」などと言い訳をしながら、この先もこの教会暦「しゅろの主日」は使われ続けていくのでしょうね。