緑の考古学

緑の考古学  2025年1月号

聖書植物の復元(10)

長住教会(福岡)
小林 洋一(こばやし・よういち)

 

 

 

ミルトスー祝福と繁栄を象徴する祝(いわい)の木

聖書では、前6世紀の無名の預言者(第二イザヤ)が語ったとされる言葉にミルトス(銀梅花|ギンバイカ)が出てきます(他にネヘ8:15、イザ41:19、ゼカ1:8、10、11)。

13 茨に代わって糸杉が生え/いらくさに代わってミルトス(    ハダス)が生える。これは主のための記念となり/絶たれることのない永遠のしるしとなる。(イザ55:13)

これはバビロンの捕囚民に対する救いの約束の預言です。植物が祝福(イトスギ、ミルトス)と災い(イバラ、イラクサ)の象徴として語られています。

エステル記の主人公エステルのユダヤ名は「     ハダサ」、すなわち「ハダス」(ミルトス)の女性形です(エス2:7)。

ミルトスは、祝福と繁栄を象徴する祝の木として、ユダヤ教の3大祝祭の1つ
「仮庵祭」にも使われます(ネヘ8:15)。この祝の木は切られても長い時間しおれないので、不死の象徴として死者の枕元におかれたり、新しくお店を開くに際しては、商売繁盛を願って門口に飾られるとも聞いています。

ユダヤ教改革派のラビに、本で得た知識を振りかざして、「ユダヤ教では、結婚式で花嫁のブーケに、ミルトスを入れるそうですね」と言ったら、「初めて知った。自分たちの結婚式ではそんなことをしなかった」との答え?!「ユダヤ教はこうだ」などと十把一絡(じっぱひとからげ)げにしてさもわかったように言う自分の愚かさを思い知らされた瞬間でした。

ミルトスの花

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