緑の考古学

緑の考古学  2025年2月号

執筆者
小林 洋一
所属教会
長住教会(福岡)

聖書植物の復元(11)

長住教会(福岡)
小林 洋一(こばやし・よういち)

 

 

 

リンゴは何も悪くない!

聖書植物園には、リンゴにまつわる誤解を解くためもあってリンゴの木も植えています。

神は、エデンの園の中央に「善悪の知識の木」(創2:9)を生えさせ、人間に、その「木からは取って食べてはいけない」と厳命します(創2:17)。この知識の木の実がリンゴとされるようになったのは、ラテン語訳聖書(後4世紀)での、「善悪の知識」の「悪」(malum)が「リンゴ」(malum)と同じスペルであったためと言われています。

もちろん、リンゴには毒リンゴや腐ったリンゴという悪のメタファー(隠喩)がないわけではありません。しかし、聖書ではリンゴは6回出てきますが、悪のイメージはありません(箴25:11、雅2:3、5、7:9、8:5、ヨエ1:12)。リンゴが4回出てくる、女性の求愛で始まるラブソング、雅歌2章3-5節では、リンゴの木は恋に燃える女性に幸福、満足、安心を与える男性のメタファーとして、また、その実は恋の病に効く薬として登場します(恋に効く薬はないはず!)。

3 若者たちの中で、私の愛する人は森の木々に囲まれたりんごの木のようです。私はその木陰を慕って座ります。その果実は私の口に甘いのです。5…りんごで私を元気づけてください。私は愛に病んでいます」(雅2:3、5)

そういえば、日本でも、ラブソングに「リンゴの唄」がありました。ただし、そこでのリンゴのメタファーは男性の愛する女性です。ともあれ、愛する対象が誰であれ、このメタファーは使えるということですね。

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