振り向くと、そこにイエスが
ヨハネによる福音書20章11~18節
シンガポール国際日本語教会牧師
伊藤世里江(いとう・よりえ)
はじめに 私と女性連合のかかわり
2025年の「例会プログラム」の4月号から9月号までを担当する伊藤世里江です。2013年~2023年3月までの9年間、日本バプテスト連盟 (以下、連盟)アジア・ミッション・コーディネーター(AMC)を務めさせていただき、女性連合が推進する「世界バプテスト祈祷週間」でもずっと祈っていただきました。また、現在も『世の光』の「祈りのきずな」において、IJCS (シンガポール国際日本語教会)を祈りに覚えていただいていることを心から感謝します。シンガポール在住12年。日本から5000キロメートル離れたシンガポールから日本の教会や女性連合の働きを見てきました。女性連合の50年は私の信仰の歩みの50年とほぼ重なります。
私は今、手元に『女性連合50周年記念誌』を置きながら、これを書いています。
女性連合の50年を振り返りながら、女性連合と「世界バプテスト祈祷週間」の働きがなければ、今の私はここにはいないと強く思っています。神の畑が「世界」であることを、ずっと女性連合の集会や『世の光』を通して、私自身が学ばせていただいて来ました。また自分の人生の転換となるメッセージを女性連合の信徒大会などで受けてきました。第20回「全国小羊会キャンプ」や40周年の信徒大会での講師をさせていただいたことは、その準備を含めて、私自身への神さまからのチャレンジとなりました。
私が連盟事務所で『聖書教育』などを担当する宣教部主事として1987年から働くようになった時から、女性連合のオフィスはいつも同じ建物でした(当時は東京の新大久保)。その時から村松直美幹事(むらまつ・なおみ、当時)に、「世里江さん、宣教師になったらいいわよ」と呪文のように言われ続けてきました。それから26年の時を経て、私がAMCとしてシンガポールに行くことになった時、直美さんは「汗拭きに」と素敵なタオルハンカチを渡してくださいました。「やっぱりこの時が来たでしょ。祈りは聞かれるのよ」と言わんばかりに。
村松さんからいただいたタオルハンカチ
振り向くと、そこにイエスが
イースターを迎える4月。各福音書が復活の出来事を伝えていますが、ヨハネによる福音書の20章では、マグダラのマリアが復活の証人として描かれています。
イエスの姿が墓から消えていたことを発見したマグダラのマリアは激しく動揺します。マリアが泣きながら墓の中をのぞくと、イエスの遺体が置いてあったところに、二人の天使が座っているのが見えました。マリアが天使たちに、「誰かが私の主を取り去りました。どこに置いたのか、分かりません」(13bc)と訴えます。後ろを振り向くと、イエスが立っておられたのですが、マリアにはそれがイエスだとは分かりません。イエスが「女よ、なぜ泣いているのか。誰を捜しているのか」(15bc)と尋ねると、マリアはその人の顔も見ずに、「あなたがあの方を運び去ったのでしたら、どこに置いたのか、どうぞ、おっしゃってください。私があの方を引き取ります」(15ef)と言います。そこでイエスが、「マリア」(16a)と名前を呼ぶ声を聞き、彼女は初めて自分の名を呼ぶ声がまぎれもなくイエスであることに気がつきます。彼女が振り向くと、そこにイエスがおられました。「ラボニ(先生)」(16a)と マリアがいつもイエスを呼んでいた言葉で驚きをもって応こたえます。
「私の父であり、あなたがたの父である方、また、私の神であり、あなたがたの神である方のもとに私は上る」(17節、『 』内)という大切なメッセージをマリアはイエスから託されます。マリアは、弟子たちのところに行き、「私は主を見ました」(18)という見たままを証しし、主の言葉を伝えました。マグダラのマリアは、復活の第一の証人となりました。
振り向くと、すぐそこにいたイエスに気づく
目の前の悲しみや困難だけに目が注(そそ)がれると、実は私たちの一番近いところにおられるイエスの姿に気づかないことがあります。私たちの人生には願わない困難や試練が襲うことがあります。教会も厳しい現実に直面していることと思います。
イエスの弟子は12人でした。それも復活の出来事もすぐには信じられず、恐れが先立ち、家の戸に鍵をかけて隠れていたような弟子たちです(ヨハ20・19~23)。そこには自分の目で手のくぎ跡を見なければ信じない、と言っていたトマスもいました(ヨハ20・24~29)。
イエスは、私たちがどんなに小さな群れだろうが、復活を信じられずに恐れていようが、イエスの側が弟子たちを、私たちを信じることをあきらめません。悲しみにくれる私たちにイエスはしっかりと目を注ぎ、私たちの名前を呼んでくださっています。予期せぬ悲しみ、別離、病(やまい)、教会のさまざまな課題…。しかし、振り向くとそこに、復活したイエスが一番近いところにおられます。私たちの名前を呼びながら、すぐそこに。
振り向くと、私たちの女性会も
今は女性会として独自の例会が持てている教会が減っているかと思いますが、年に一度でも二度でも共に学ぶ機会が持てるといいですね。それぞれの教会で女性たちが担(にな)ってきた働きはとても大きなものです。
2025年度、「広く世界の状況を知る~小さき声に心を傾け~」という女性連合の活動テーマを意識し、『世の光』を今年度も隅から隅まで読みながら、それぞれの女性会や教会の働きが復活の主に押し出されるものでありますように、祈ります。
振り向くと、そこにおられるイエスに、私たちも出会っていきましょう。
(引用は協会共同訳を使用)
北海道生まれ。学生時代にミッションスクール入学を機に信仰を持つ。西南学院大学神学部、サウスウエスタンバプテスト神学校卒。日本バプテスト連盟宣教部主事、富士吉田教会牧師を経て、シンガポール国際日本語教会牧師(2013年より現在)、連盟アジア・ミッション・コーディネーター(2013~2022)。