祈りに応えてくださる主
徳島教会(徳島) 前田 敦子(まえだ・あつこ)
40年余り前、東京の音楽大学に通っていた私は、音楽を学んでいる意味も、生きている意味も見出せず、悶々とした日々を過ごしていました。
クリスチャンの友人の誘いで教会を訪ね、イエスさまと出会い、このお方についていけば間違いない、とバプテスマの決心をしました。また、自分に与えられた音楽の賜物を、福音宣教のために用いていただきたいとの願いが起こされ、祈り始めました。
大学卒業後、徳島に戻り、結婚をしましたが、歯科医である夫の仕事を手伝わなければならなくなり、ピアノが全く弾けない生活に変えられ、主に祈りました。「私では、あなたさまの役には立ちませんか」と。神さまからの応答はなく、ひたすら仕事、家事育児に精を出し、教会で賛美歌を弾く時だけがピアノに触れられる時間となりました。
結婚前から夫の救いを祈り続けていましたが、元気であった夫が突然病に倒れてしまいました。長きにわたりイエスさまを拒絶していましたが、亡くなる前日、イエスさまを受け入れ、私の手を握り、「ありがとう」と言って幼子のような笑顔で天に召されていきました。
夫を天に送った後、まだ私が若かったころに伴奏をさせていただいた伝道者の方から、「伝道のために一緒に音楽活動をしませんか」という声がかかり、驚きました。嬉しいと思う反面、22年近くろくにピアノを弾いていません。そのため、思うように指が動かず、久しぶりにクラシックの楽譜を見た時には、オタマジャクシの大群に見え、「こんな曲、私に弾けるの?」と自問自答するありさまです。
それでも、主が道を開いてくださったと確信し、音大受験生のようにピアノの練習に励み、全国各地での伝道コンサート活動がスタートしました。長年のブランクから、人前での演奏に恐怖を覚え、練習しながら涙が止まりませんでした。ただただ、「主よ、弱きこの者の側にいて力を与え、支えてください。すべては主のみ名のためにピアノを弾かせてください」と切に祈りました。自分の力でやるのではなく、主に寄り頼むことを教えられたのだと思います。私の演奏は十分ではなかったかもしれませんが、その時その時にできるベストを尽くせました。それは、主のお護りと祝福であったと思います。時を備え、主は祈りに応えてくださいました。
私はもともとバプテスト生まれでしたが、他教派に籍を置き、25年ぶりにバプテスト教会に戻ってまいりました。徳島教会において、いろいろな形でご奉仕させていただいております。音楽活動は終わりかと思っておりましたのに、まだ用いてくださるのだと、主のお恵みに感謝です。
「どんなことでも、思い煩うのはやめなさい。何事につけ、感謝を込めて祈りと願いをささげ、求めているものを神に打ち明けなさい。そうすれば、あらゆる人知を超える神の平和が、あなたがたの心と考えとをキリスト・イエスによって守るでしょう」(フィリピ4・6~7)