時代の転換点

時代の転換点に立って 2024年6月号

〜これからの女性連合〜
「女性連合・私たちのひろば」(2024.3.9,10)報告

「これからの女性連合」検討チームメンバー
松坂有佳子(まつざかゆかこ・静岡教会)

 

(5月号の続き)
この報告を書くために両日の対話を反芻(はんすう)しながら、わたし自身が気づかされたこと、考えさせられていることを記してみようと思います。

実はわたしは母と娘三代に亘り奨学生として女性連合に祈られ支えられてきました。世代や時代を超えて、この交わりに育てられて来たものがわたしたちの中にあるのだとしたらそれは何だろうと考えてみました。

戦後すぐクリスチャンになった母の時代は、ひとりの女性として自立して生きることや、一つひとつの教会が自立して歩むことも困難な時代で、世界に目を向け連帯するという女性連合(当時は連盟婦人部)の使命は、ある意味唐突、無謀とも感じられるものだったのではないでしょうか。しかし自分たちのスケールを完全に超えた神の宣教に「同労者」として誰もが招かれているという福音のメッセージは、自分にも献げるべき小さな力があり、それを神が必要とされているのだという気づきを起こさせ、わたしたちが思う以上に母たち世代を強くエンパワーしてきたのでしょう。

母はわたしが『世の光』の編集委員になった時、いきなり35年分のバックナンバーを送ってきました。こちらの事情を加味しない問答無用なやり方にいささか閉口しながら、少しずつ読み進め、それまでわたしが女性連合の歴史に感じていた印象とは異なるものを感じることになりました。母がわたしに伝えたかったのは、今よりももっと性差別が当たり前だった時代の中で主体的に神に従って歩もうとする女性たちが祈りと知恵を寄せ合って紡いできた歴史・Herstory(※)なのだと思います。牧師になるという夢をかなえたわたしにも、この歴史は無関係ではないと教えたかったのかもしれません。

わたしの時代には連盟の中に「女性牧師・主事の会」が発足し、多くの女性が教役者として立てられ、今回の機構改革ではジェンダー平等を最重要視した選挙制度が整えられることになりました。国外伝道における女性連合と連盟の間に存在してきた構造的な差別についても「悔改め」が表明され、新しいパートナーシップを結ぶべく準備が進められています。教会の中には性別による会組織を解消した教会も出てきて、ゆくゆくはそのような方向性が顕著になっていくと予測されます。

そして娘たちの時代が始まっています。わたしたちは娘たちの時代に何を残していったらいいのでしょうか。わたしを含めて女性たちの中にも、教会の中にも、内面化した差別や偏見は依然として根深く残っています。ジェンダーギャップ指数世界125位のこの国でまだまだ女性が集まり、互いをエンパワーしながらつながる意味は大きいのではないか。アジアや世界を見渡してみれば、もっとジェンダーギャップの大きな国や地域があり、わたしたちがいち早くこの交わりを解消してもいいのか。「世界伝道」という使命によってつなげられてきたわたしたちとして、今、問われているのではないかと思うのです。

マンパワーや経済力が小さくなることは必定ですが、祈りや使命がそれに比例するわけではありません。変化が早くなる時代においても互いの声に耳を傾け合う対話によって、新しい時代のHerstoryを生み出していく組織を残していきたいと願います。

※ 「彼らの物語his+story」ではなく「彼女たちの物語her+story」
フェミニズム運動の中で1970年頃使われるようになった言葉。

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